妥協を許さない名監督として有名な世界のクロサワこと黒澤明監督。

黒澤明監督が考え出した『撮影技術』をみると、どれだけ妥協を許さない監督なのかを理解することができます。

この記事では、『黒澤明監督が生み出した撮影技法』をご紹介いたします。

世界のクロサワが生み出した撮影技法

あなたは『世界のクロサワ』、映画監督の黒澤明監督をご存知でしょうか?

若い世代の方は、ご存知ではない方も多いようですが、今では巨匠といわれる名監督たちは尊敬してやまない伝説の映画監督なのんです。

では、なぜ巨匠といわれる名監督たちは尊敬してやまないのか?

それは、黒澤明監督の映画に対する妥協を許さない姿勢です。

完璧な映像を求め、常識や定石を嫌った黒澤明監督。

そして妥協を許さな買った結果、生まれたのが黒澤明監督の『撮影技術』です。

それでは、黒澤明監督が生み出した『撮影技術』を挙げてみましょう。

 

墨汁の雨

今では『雨のシーン』など、当たり前ですが、白黒映画の時代は、そうではありませんでした。

当時のフィルムの感度の悪さもあり、モノクロの映像で微妙な陰影を映し出すことが、難しかったのです。

特に、雨のシーンを撮影しようとしても、水は陰影がぼやけて、はっきりと映りません。

当時の『雨』を表現する主流な技法は、水溜り雨粒が落ちて広がる波紋を映すこと。

雨と表現すると言えば、水溜りを撮ることが常識だったそうで。

そんな絵図らに不満に思った黒澤明監督は、新しい技法を考え出しました。

それは、『墨汁を混ぜた水を使って、色のついた雨を降らす』というものでした。

この墨汁の雨が使われた映画として有名なのは、『羅生門』と『七人の侍』です。

雨の陰影が薄くて映らないのなら、陰影の濃い雨にすればいい、といった逆転のだったのでしょうか。

この『墨混じりの雨』は、傘を差す人物の撮影に使用したところ、水滴が強調され、自然な感じの『雨のシーン』が撮影できたそうです。

黒澤明監督は他にも、赤と白の椿を撮る際に、白が灰色に映ってしまうモノクロ映画で、白い花を撮るために、赤い椿を黒く塗り、その陰影の差で『白い椿』を可能にしたそうです。

目で見た色ではなく、映画として見た時の色を意識する。簡単なようでいて、凡人には難しい発想ですね。

カラーが当たり前の時代でも、見栄えを良くするために血の色を蛍光色の派手なものにする演出も、ここから着想を得たのかも知れません。

暗い森の中での撮影

当時の映画フィルムは、暗い場所での撮影に向きませんでした。

古い西部劇などは、夜のシーンを表現するために、昼に撮ったシーンを編集で光量を絞って薄暗くし、夜に見せていました。

しかし黒澤明監督は、どうしても薄暗い『森の中』で撮影をしたかったのです。

暗い場所を明るくするのに必要なのは、照明です。

ならばライトをつければ解決だ、とはなりませんでした。

ライトをつけるための電源が確保できなかったのです。

今の時代なら、持ち運べる発電機なり、大容量のバッテリーで対処できますが、当時はそんなものはありませんでした。

そこで黒澤明監督が用いた解決法は、『鏡を何枚も使って、森の外のと明かりを集めてくる』でした。

仕組みとしては、子供でも思い付くほどに単純ですが、実際に行うのとした時の手間や苦労を考えると、黒澤明監督の拘りに対する執念を感じずにはいられません。

もしかすると、この撮影方法が、某ロボットアニメのあの兵器のアイデアに繋がった可能性も、あるかも知れません。

マルチカム撮影

これは、少し専門的な話になりますが、当時の映画は、一つのシーンを一台のカメラで撮ることが、当たり前でした。

それは、カメラに合わせて、照明や役者さんたちの立ち位置などを整えるからです。

舞台演劇でいえば、カメラが客席がとなるので、そちらに向けて一番いい状態にするわけです。

しかし黒澤明監督は、『流れや役者の気持ちがブツ切れになる』と、この方法に満足できませんでした。

そこで考え出した方法が、『一つのシーンを複数のカメラで一気に撮る』という、ある意味で常軌を逸した方法でした。

これはつまり、舞台演劇で無理矢理に例えるならば、『舞台で演じている劇を、360度どころか、舞台に上がって見てもいいように、全てを完璧に整える』といった具合になるのです。

これはもはや芝居の範疇を超え、現実の再現に近い作業となりました。

そうして撮られた映像は、その後の編集を経ることで、観る者にまるでそこに自分がいるような錯覚を覚えさせるほどに、実に自然な映像となったのです。

まさに、映像撮影における革命でした。

後にこの撮影法は、映画におけるスタンダードとなり、ハリウッドなどでの大規模な撮影のスタイルを形作っていったのです。

そしてついには、この撮影方法はドラマにも用いられるようになりました。

この撮影方法で取られたドラマが、かの有名な海外ドラマの金字塔である「ER」です。

こちらは演出と違い、技術の進歩で廃れてしまったものも多いでしょう。

しかし、それらは今の技術の礎となり、そして今もなお主流として用いられている撮影方法もある。

やはり、黒澤明監督は偉大な映画監督だったのです。

完ぺき主義者・黒澤明監督

 

黒澤明監督の映画は、映画の都であるハリウッドの、有名監督もが「凄い」と賞賛します。

それは、なぜなのか。

黒澤明監督が生み出した撮影技法をいくつかご紹介しましたが、それ以外にも、今の映画に多大な影響を残すほどの斬新な演出や技術を多くの編み出したから、というのも、確かにあるでしょう。

しかし、『黒澤明監督が生み出した撮影技法』はクロサワ映画の『凄さ』を構成する一部でしかないのです。

黒澤明監督が世界の名監督から絶賛された本質は、黒澤監督が目指した『完璧な世界』でした。

完璧を目指したがゆえに、それまでにない演出を産み出し、技法を編み出し、そして役者さんやスタッフ達にも、無茶振りともいえる注文をぶつけた黒澤明監督。

また、『黒澤組』と呼ばれた、役者や裏方のスタッフたちも彼らも黒澤明監督の夢中あぶりに応えました。

決して、黒澤明監督一人が凄かったからではなく、関わった人たちがすべからく凄かったのです。

そうしたことで、根幹に『奥深いストーリー』があり、それを支える『戦闘や刀を扱う専門家も唸るほどに練り込まれた脚本』が出来上がり、そして、それらの『本物を表現しきる役者たち』と、『観る者に直感的に理解させられる描写のしかたや効果的な演出』の数々が、『クロサワ映画』として形作られたのです。

最初に映画を人物写真に例えましたが、それでいえば、『モデルも衣装もメイクも、機材もカメラマンも、そして撮影場所からその場の環境にもこだわり抜いた、最高の一枚』となるのでしょう。

そして、それらを指揮し、『完璧』を目指して、斬新で鮮烈な傑作に仕立て上げたのが、黒澤明監督でした。

さいごに

『黒澤明監督が生み出した撮影技法』をご紹介いしました。

妥協を許さず完璧な映画を探求し続けた黒澤明監督。

黒澤明監督の常識にとどまらない演出、思考、そして何より熱意。

この全ての要素が、当時の最先端にして最高峰であったスタッフよして役者陣と融合したからこそ、一流を超えた『超一流』の映画が誕生したのだと思います。

世界のクロサワでしたが、妥協なく追い求めた映画は全部で30作品。

映画ファンなら是非、チェックしておきたいですね!

 

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この記事を書いた人

名前:ドット東京

《簡単な自己紹介》
黒澤明監督作品のファン暦30年以上!
『用心棒』『椿三十郎』『七人の侍』『蜘蛛巣城』『隠し砦の三悪人』など、黒澤明監督の白黒時代の時代劇モノが大好物です!
黒澤明監督の魅力を少しでも伝えられればと思い、この記事を書きました。